北アルプス2010夏 〜憧れの雲ノ平へ〜  2010.08.13-16

雲ノ平という地名を知ったのはいつのことだったか・・
北アルプスへ出掛けるようになった2年前、双六小屋に宿泊した時、他のお客さんの会話から聞こえてきたように思う
なんて素敵な名前だろうと・・興味を抱いたものの
北アルプスでも奥地、山深い所に位置していて、なかなか行けるところではないように感じていた
それでも、いつか行きたいと思ったのは、
そこに日本庭園、アルプス庭園、スイス庭園そしてアラスカ庭園と名付けられた湿原があることを知ったからだ
2008年2月、アラスカへオーロラを見る旅に出掛け、アラスカに魅せられていた
星野道夫のエッセイや写真集を見て、アラスカの四季にとても魅せられた
いつか夏にアラスカへ行く
が、その前に日本にあるアラスカ庭園を見たい・・ そんな想いは、意外と早く現実味を帯びた
北アルプスのガイドブックなどをいろいろ見ているうちに、体力、日程的にも行けると自信が出てきたのだ
雲ノ平に立つ・・・  思い描く景色は、青空・白い雲・美しい山々に取り囲まれた雄大な湿原

・・・・・ふ、 神様のいじわるw

勤め先の夏休みは、13日から17日まで
3泊4日の行程なので14日から歩き始めても良かったのだけれど、万が一の悪天候による延泊なども考えれば早い方がいい
というよりも早く行きたくてうずうずしていたのだ
12日の夜行バスでも良かったけれど、私にとっては初めて3泊4日山行、無理はしたくない
ややお金はかかるけれど、前夜の内に富山入りし、前泊することとした
その日は台風が日本を北上していて、停滞してくれるなよと願っていたけれど、被害も小さくあっさり過ぎ去ってくれた(ように思っていた)
12日はペルセウス流星群がよく見られる日と聞いていた 富山のビジネスホテルの窓から空を眺めてみると星も見えていた
流れ星までは見えなかったけれど・・・ 台風一過、道はともかく天気には恵まれたと信じていた

・・・・・ふ、神様のいじわるw

*初日* 折立〜太郎兵衛平・太郎平小屋泊

富山駅間5時出発の折立行きのバスに乗車
今年は折立まで向かう道が通行止めになっているそうで、迂回路を通るため、通常より時間がかかるそうだ
だからか、意外と乗客は少ない
徐々に徐々に陽が上がり、明るくなってくる中バスが走る 東の空はほんのり赤い

8:40折立に到着 自家用車も車道に並ぶほどの賑わい
大勢の登山者で賑わう登山口
トイレに行き、水を汲み・・と思ったら生水は飲まないで下さいと書かれていたので、自販機で水を買う・・
足、手、首、腰 伸ばしたり回したり、準備体操をしていざ入山

入口には不幸な遭難事故で亡くなった方々の慰霊碑がある 手を合わせてご冥福を祈りつつ、安全祈願・・
焦らずゆっくりゆっくり歩く
この頃はまだ陽射しがあったので、あまり早く歩くと汗が噴き出してくるので、ゆっくりゆっくり・・ 足下のアカモノの実やゴゼンタチバナなど
見慣れた花や実のある様子を道を進んでいく
あまり展望がない道を進むこと1時間50分 ゆっくりペースで1867mの三角点に到着
雲が出てきたけれど、薬師岳の気配も感じられ、大勢の登山客が休憩していた

私も一旦ザックを下ろし、水分補給をし一息ついたところで、再出発
花々が咲く草原地帯を歩き、石畳の道へと進んでいく

空は白く染まっているけれど、雲は厚くはない
ここから上はもう高い樹木は無い カンカン照りであれば、暑いのが苦手な私にはつらいだけだ・・
曇っているくらいが歩きやすいと・・・ 雨さえ降らなければ逆にラッキーだと思いながら・・ 自分に思い込ませながら・・・
石畳の道を一歩一歩、歩む

上方には薬師岳の稜線、下方には有峰湖が見下ろせる
そして・・・北方には神々しい剱岳が見える
映画を見ていなければ、分からなかったかも知れないけれど、その悠々たる姿には遠くからでも引き寄せられる



いつか登るぞと思いつつ・・・
ちらちらちらちらその存在を意識しながら登っていく
手前近くのお山に剱岳が隠れてしまうなぁと思い名残惜しんでいると、そこで休憩している女性が妙にこちらを見ているなと・・・
歩きながらすれ違う時や、休憩している人の前を通るときには「こんにちは!」と挨拶をしているものの、
剱岳に心奪われ挨拶をするタイミングを逃したなぁと一瞬目が合いつつも、挨拶できずにいたら
その女性が口を開いた 正確にはよく覚えていないのだけれど 「おかしなことを聞くかも知れませんが・・・Yocchyさんですか?」
といったようなことを仰ったと思う
口を開いた瞬間、私もピーンと来てしまって 心の中で「りこさんだ〜〜〜!」と・・ ん? 心の中か?声に出したのか?
よく覚えていないけれど、ネットで知り合ったネット上だけのつき合いだったりこさんに出会えたことが嬉しくて
握手を求めてしまった♪ ホント嬉しかったのだ♪

だってだって・・・りこさんは13日下山、私は13日入山という情報交換だけはあったものの、
お互いどこをどう歩くか知らずにいたのに・・・ 偶然、会えるなんて! 気づいて貰えるなんて!!
りこさんが私に気づいてくれたのは、私のこなきじじい・・・ザックの種類とサイズと色を目印に、それだけで気づいてくれたのだ
もう感謝感激だ!
お互いが普通に歩いていたら、気づかずにすれ違ってしまったかも知れない
たまたまりこさんがそこで休んでいて、たまたまそこで私が立ち止まり、背を向けたのだ
そこでたまたま気づいてくれたのだ 本当に感激だった

台風の影響で予定がやや狂ったりこさんの様子を聞き、お気の毒に・・と思ったのだけれど、
その後りこさんのブログを拝見すると私よりもはるかに素晴らしい景色をご覧になられている!!
美しい北アルプスの景色が見たい方は、こちらのHPなんて見ずにりこさんのブログに飛んで頂きたい♪

しばし、お互いの山行の様子、予定などを話した後、互いの安全山行を願いつつ、別れた
心がうきうきすると足取りも軽くなる
石がごろごろの足に優しくない道も、やや痛んで不安な木道も、苦にならず、曇り空の中、心は晴れ晴れっ♪

13:50太郎平小屋に到着

小屋に宿泊手続きをし、荷物を置いた後、外へ・・・
生ビール1000円 いっただきま〜す!! 乾杯の先は翌日、翌々日向かう雲ノ平、三俣蓮華、双六岳だ
ビールはめっちゃ旨い! 山ビール最高♪

北方に目を向ければ薬師岳、たおやかな優しい稜線が美しい
空が青かったらもっともっと素敵だろうけれど・・・またいつか、登りに来るからその時は青空の下で見られますように!



改めて、南方を眺める
曇っている割に遠くまで展望がある 少し霞んではいるものの美しい山の景色だ



少しずつ気温が下がり、雨がぱらついたり止んだりする中、のんびりしていたら、
単独女性の方と挨拶を交わし、その後、山の話をしたり、何故か恋愛相談?wになったりしつつ、夕食まで時間をつぶした

太郎平小屋では、大きな押入のような2段ベッドタイプの部屋になっていて、私は上段の4人部屋だった
ふとん一枚分と荷物を置くスペースもあるので、まぁ及第点 でもちょっと残念だったのは・・夕食のおかずがちょっと貧素だったかな・・
もちろん標高2372m食材の運搬も大変なのだ 文句をいう気はないのだけれどw

夜が更けるにつれ、雨が激しくなってきた
翌日の天気予報は 「曇り又は霧、午後雨又は雷雨」 憧れの雲ノ平へは厳しい条件がつきつけられた
それでも天気予報が外れて朝になると「朝焼けが見られたりするんだよ!」などと同室の女性に話しながら、夢物語を語りながら、眠りについた
眠りについたものの、すぐに強い雨の音で目が覚める
・・・ホントに厳しい天気だな・・・と悪天を覚悟して、朝を迎えた

*2日目* 太郎兵衛平〜雲ノ平・雲ノ平山荘泊

朝。5時の食事前に外に出てみた 雨は降っていない
でも、霧に包まれ視界はとってもとっても狭い 朝食後、しっかりレインウェア上下を着込み、5:50出発
視界は前方10mも見えないほどだ
カメラはちょっぴり大きいSP-550uzとちっちゃいμ710を持っていたけれど、
首からぶら下げてレインウェアの中に忍ばせておいてもすぐに撮れるようちっちゃい方を使うことにした
となると、大きい方のカメラは単なる“お荷物くん”となっちゃうのだけれどもw

道は水が流れ、沢のようになっている 滑らないように気を付けて歩く
立派な沢も3箇所渉る
そこではりっぱな橋が架けられていて、この橋は塗装なのか材質なのか、濡れていても全く滑らない素晴らしい素材だった

木道を歩いていると、足下になにやら物の怪の気配
体長15cmほどの大きなカエル君だった 驚かすなよ、カエル君!

太郎平から歩き始めて2時間半で薬師沢小屋に到着
霧は少し晴れたものの、雨が時折強く降る
レインウェアの手入れが不十分だったので、下は撥水しているものの、上着の袖部分は少しずつ水がしみ込んできた
数日前に撥水スプレーを買ったものの、ついつい億劫になっちゃって手入れ怠っちゃったんだよね・・ 後悔先に立たず・・・ 次回はしっかり手入れしよう!
薬師沢小屋前の水道からお水を頂き、少し雨宿りをしてから先へ進む まずは真っ赤な吊り橋を渡った
落ちることはなさそうだけれど、足を滑らせたら、片足ずっぽりはまってしまいそうな空間がある
恐る恐る気を付けながら渡った 渡った先では金属のハシゴ、木製のハシゴを下る
思いザックを背負い、油断すると危ないぞと気を引き締め、一歩一歩ゆっくり降りる

勢いよく流れる川沿いの道を真っ直ぐ進めば高天原だそうだ
が、今日は危ないので、高天原方面に行く人も雲ノ平経由にするように案内が出されていた

雲ノ平への直登は、急登だ
地図で見ると等高線がびっしり詰まっていて、これは本当に急そうだなと感じていた

いざ歩き始めると、本当に急だ! 急な箇所では写真を撮っていないのだけれどw
さらに水が流れる 沢登りはしないので、本当の沢登りとは全然違うだろうけれど、私にとっては十分沢登りだ!
幸い、濡れていてもこの辺りの岩は滑らない 時折苔生した岩の上が滑ったけれど・・・

それにしても・・・この坂、長かった ほぼ2時間、ひたすら登った
1時間くらいで、もう終わりだろう、もう終わりだろうと思いつつも上方に坂が続いて見える時は気が滅入った
そんな時・・・心の中で「明るく、元気に、楽しんで!」「苦しみに感謝!」「(試練に)ありがとう!」と言いながら登った
不思議と足取りが軽くなるのだ

エベレスト単独無酸素登頂を目指し、先日出国した登山家・栗城史多さんは、身体検査によると体力・筋力は成人男性の平均よりも低いそうだ
なのに、疲労物質の乳酸が溜まってくると、その乳酸を減らす力があることが分かったそうだ
専門家によれば、それは特殊能力ではなく、苦しい状況を素直に受け入れ、対峙している姿勢、気持ちが脳がそうさせているそうだ

雨で楽しくない、つらいなどとマイナス思考になってしまえば、どんどん状況は悪化するのだ
今、雲の平に向けて歩いている私は、誰に頼まれた訳でもなく、誰のためでもなく、自分がやりたくて、自分のために歩いているのだ
雨も誰のせいでもない それが今の状況なのだ
雨だろうが、楽しまないともったいない!! 「明るく、元気に、楽しんで!」 でもまた晴れた日に歩きに来るぞっ!
そう思わせてくれる栗城さん、天候に感謝しつつ・・登る
そうすると本当に心も足取りも軽くなる

でもね・・・2時間、長い長い水が流れる急登を登ってね・・平たい湿地が広がって、憧れのアラスカ庭園が近づいてきたのに、
視界は数十mあるかないか・・・霧も大粒の雨に変わるとね・・・ ちょっとめげたw     ・・・神様の・・いじわる・・・・ って言いたくもなるのw
でもね・・・もう言わない! また絶対来るもん! そんな強い意志を持たせてくれた神様にも感謝だっ!!

アラスカ庭園で奥日本庭園とのどかな湿原の風景を眺めながら・・・というよりも想像しながら進む
年上の先輩方4人組の後を追いながら、雲ノ平山荘へ!!
12時到着。

雲ノ平山荘は、今年改築され、8/10に新装Openしたばかりの山荘
吹き抜けの3階立て構造で素敵な山小屋

前の週に訪れた会津駒ヶ岳・駒ノ小屋の管理人さんと、雲ノ平山荘のご主人は知り合いだそうで、ちょっとお届け物を頼まれていた
山荘に入り、濡れたレインウェアを脱ぎ、ザックカバーを乾燥室に干してきてから、宿泊の手続き
窓口にいた方に、「二朗さんですか?」と尋ねてみると「はい、私です!」と優しいものごしのお方。
お届け物を渡すと、喜んでくださって、御礼にと・・・・ 缶ビールを頂いてしまった(≧∇≦) ごちそうさまです!

私の寝床に荷物を置いて、下着までぐっしょり濡れてしまっていたので、木の香りのする真新しいトイレで全部着替えた後、缶ビールを持って食堂へ!
お昼はダイエットスープとクッキーのつもりだったんだけれど、どうにも熱い食事を頂きたくなったので、ラーメンを注文♪
ビールとラーメン・・・これだから太るのだw 分かっているけど、美味しいものを美味しくいただけることの幸せに浸りたい時もあるw
食では、二朗さんや従業員の方が駒ノ小屋の三橋さんからの素敵な贈り物に喜んでいらっしゃって、配達人を請け負えた私としてもすごくすごく嬉しかった

北アルプスと尾瀬・会津の山小屋がつながっている
人の出逢いが出逢いを呼び、人が山がつながっている 不思議な縁、温かな縁が嬉しくて・・・本当に心が和んだ

天気には恵まれていないものの、人との出逢いやふれ合いには恵まれている そんな山の素晴らしさに感謝

食後、少し布団に横になり身体を休めた後、雨が上がったようだったので、外に出てみた
来たときには慌てて中に入ったので気づかなかった看板を見つけた 素敵な文字だ
霧も少し晴れて、ハクサンイチゲやアオノツガザクラなどなど花々も楽しめた 緑がとってもとっても綺麗だ 
青空の下だったら・・・  また来るからねっ!!

雲の平山荘の夕食は、お鍋!!
ご飯と小鉢(切り干し大根)とお鍋! 大きな大きな土鍋からお玉で取り分けて、みんなで頂くお鍋は
石狩鍋をアレンジした酒粕仕立ての粕汁・・・ これがめっちゃ旨いっ!! そして身体がぽっかぽかになる!
温かな温かな食事に大満足だった(*^ー^*)

夕食後、二朗さんが窓際でラジオのアンテナを動かしながら、ノイズの中から天気予報を確認する
私も傍らでラジオを聞いていたら、東北が大荒れだと分かった
その後、二朗さんが小屋の2階、1階で得た情報を知らせてくれた

前線が停滞していて、北海道・東北は大荒れ、北アルプスもその影響で雨・霧の天気
南にある高気圧は弱くて、秋雨のような状態とのこと
そういわれれば、雷雨の予報もあったけれど、雷はならなかった 夏雲というより秋の空だ
そうか・・・翌朝、気持ちよい青空が広がり、後ろ髪を引かれながら双六へ向かうといった状況にもならない訳ね・・・
いいのw 天然ミストを浴びて、潤いたっぷり山歩きを楽しむの! Positive Thinking というよりもヤケだ(≧∇≦)

夜、9時消灯・・・3階の寝床では、屋根に当たる雨の音が自然を強く感じさせてくれる
山小屋で聞く雨の音は決して嫌いではない
雨の粒が大きくなったな・・ 小さくなったな・・ あ、風向きが変わった そんな研ぎ澄まされる感覚を楽しみながら・・・眠りについた

3日目へ続く・・・ )

  

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